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大阪のマーケティングリサーチの専門機関、市場調査社のスタッフブログです。
日常生活でスタッフが感じたことや、弊社のサービスの紹介をしていきます。

立田が、今最も関心を持っていること【第2回】(立田)2012年10月18日 木曜日

【第2回
課題認識②
自社も含めた“守旧派”のリサーチ会社が、お客さまに提供すべき価値とは!?
■リサーチの3つの機能
日産自動車市場調査室の室長 星野朝子さんが、以前仰っておられたリサーチの3つの機能です。

①勝つための「アイデアを発想する」

仮説発見型(アイデア創出型)リサーチ

②勝つ道を探すために「戦略仮説を検証する」


仮説検証型リサーチ


③負けないために「市場実態を把握する」(課題を発見する)


実態把握型(課題発見型)リサーチ

もちろん、現場で行われているリサーチの全てが、上記のどれかにパキッと別れるわけではなく、少しずつ重複していますが、どれをメインテーマとするのかは区分されており、それぞれでリサーチの設計、手法も異なります。
■リサーチ会社の集中戦略の考え方
あくまで一つの切り口ではありますが、守旧派リサーチ会社の生き残り策としては、「この中のどこかにフォーカスを当てて、そこに特化する」という集中戦略の考え方もあるのではないか、と思っています。
もちろん、そこに集中すると決めた以上は、コスト/経験/ノウハウ/知見などのいずれかにおいて、お客様よりも、そして競合他社よりも高い価値を創出できなければなりません。
どこを選ぶかは守旧派リサーチ会社それぞれの“理念”によるので、「正解」はないと思います。
どれを選んだとしても、「競合リサーチ会社が手を出さない」&「お客様に求められている・喜んでいただける」の条件が満たされるのであれば、ビジネスとしての成長性はあると判断できるかと。
■「②仮説検証型リサーチ」でのお客様価値の見直し
あくまで私の経験の中での感覚ではありますが、現在のリサーチ市場の市場規模としては、
③実態把握型(課題発見型)リサーチ>②仮説検証型リサーチ
>①仮説発見型(アイデア創出型)リサーチ 
ではないでしょうか。
「③実態把握型(課題発見型)リサーチ」には、パネルリサーチが含まれるので規模としては大きいと思われます(ちなみにインテージさんの2012年3月期の決算資料によると、SRI/SCIなどのパネル系の売り上げが153億円で、調査事業の約6割を占めるようです)。そういった装置系以外でも、「定点調査」「トラッキング調査」などの名称で盛んに行われています。しかし、これら「③実態把握型(課題発見型)リサーチ」では、装置を持たない守旧派リサーチ会社として差別化を出すのは難しいでしょう。
残りは「②仮説検証型リサーチ」「①仮説発見型(アイデア創出型)リサーチ」。「①仮説発見型(アイデア創出型)リサーチ」はまだ市場として成立していないと思います。となると、現在のところ注目すべきは市場は「②仮説検証型リサーチ」。
この「②仮説検証型リサーチ」の重要性は、今もそして今後も変わらないと思います。しかし、本当の意味でこの「仮説検証型リサーチ」を使いこなすためには、検証すべき仮説が明確でなくてはなりません。本来、仮説構築とは非常にクリエイティブな作業です。リサーチ会社は、まず自分たちの仮説を構築し、お客様とディスカッションをしながら仮説を膨らませる、そういうプロセスに資源を投下できているのでしょうか?
リサーチ会社は、リサーチの専門会社として、下記の3点を遵守したうえで、お客様と議論しながら仮説を構築しなければならないと思います。
  • 普段から特定の業界にとらわれない幅広い情報収集に努め、大きな社会の動きや生活者の動向を把握しておくこと
  • 仮説構築時には、「生活者」を生活背景も含めコンテクストとしてイメージしてみること
  • 企業様が「生活者」を自社の理論で見てしまいそうになった時でも、常に「生活者視点」に立脚すること
こういった活動により、仮説構築段階でお客様に新しい視点をご提供できれば、それは大きな価値になるのではないかと思っています。
なお、これは私個人の思いです。お客様が本当に求めておられるかどうかは不明です。「リサーチ会社にそんなこと求めてないよ!」と言われてしまうかもしれません。引き続きの検証が必要だと思っています。
■「①仮説発見型(アイデア創出型)リサーチ」の可能性
お客様である企業様が競合に勝つためには、新しい発想が必要です。例え、優れた技術(シーズ)をお持ちでも、イノベーティブなアイデアがないとビジネスとしては成功しません。
お客様は、もしかして、ここの悩みが最も大きいのではないでしょうか?(これまた私の勝手な憶測です。。。)
「イノベーティブなアイデア創出」というプロセスに、必ずしも「リサーチ」(ここではコンシューマー・リサーチの意味で使用しています)が必要なわけではないと思います。
ジョブズや日本マクドナルド社長の原田永幸氏のインタビュー記事などを読んでいると、リサーチに対するスタンスは
「③実態把握型(課題発見型)リサーチ」のリサーチがあればいい。
アイデア創出のプロセスに「コンシューマー・リサーチ」は必要ない。
というお立場のように感じます。
ここで少し、話を変えて、元博報堂の高橋宣行さんの「発想ノート」から、一文を引用します。
「考える」とは、けっこうやっかいで単なる思いつきではありません。社会、経済環境、企業、組織、市場、商品、生活者、価値観、暮らしぶりなど、社会的文化的な視点で見続けないと、創造的作業にはなりません。手持ちのささやかな経験や知識、ネットからの情報だけでは導き出せません。
 「考える作業」とは、こうした社会の動きに対抗することで成立し、今やすべての職業がクリエイティブな職業に向かっている、と言われています。
その他の文献なども含めて見てみますと、アイデア創出に必要な要件とは・・・
  • 既成概念をぶち壊す姿勢
  • 幅広い情報の収集・ストック
  • それらの関連付け
であると言われています。
コンシューマー・リサーチで得られる情報というのは、もちろん上記で言う「幅広い情報」を網羅するものではありません。しかし、そのうちの一つであることは間違いなく、その意味では、リサーチがアイデア開発に役立つ可能性もあるはずです。
であるならば、「コンシューマー・リサーチのそういった場面での有効活用」をご提案できれば、リサーチ会社としてこれまでとは違った新たな価値をご提供できるのではないでしょうか。
ジョブズや日本マクドナルドの原田社長にはこれまでそういった活用法を明示できていないだけで、それができれば、彼らもコンシューマー・リサーチを、アイデア創出ツールの選択肢の一つとして取り入れてもらえるのでは?
えらく話がでかくなってしまいましたね(笑)
次回、「イノベーティブなアイデア発想につなげるリサーチ」について考察してみたいと思います。
【第3回】 新たな価値提供を目指して イノベーティブなアイデア発想ができるリサーチ会社もあっていいんじゃないか!? につづく)
(立田)

立田が、今最も関心を持っていること【第1回】(立田)2012年9月20日 木曜日

「立田が、今最も関心を持っていること」4回シリーズ
【第1回】
課題認識①
リサーチという機能がなくなることはないが、リサーチ“業界”は近い将来なくなるかも!?
手前味噌で誠に恐縮ですが、私はリサーチが大好きです。ある種、趣味のような存在で、リサーチの
現場
が楽しくてしょうがなく、そして、やればやるほど 「極めたい!」 という欲求が湧き起こってきます。まぁ、好きなことを職業にできているのは、幸せ者だと思います。
では、リサーチの何が好きなのだろう?
自問自答してみたところ、以下のような結論に達しました。
あらゆる情報、例えばマスメディアやマーケティング専門誌から聞こえてくる社会の動き・生活者の動向、書籍から得られるアカデミックな情報、自分が遊びに行った体験、飲み会で知り合いが何気に言った一言、そして、それに加えて
デプスインタビュー での対象者の発言、これらの中から一本の線が紡ぎだされ、一つの解が導き出されたその瞬間。このエクスタシーが忘れられないのです。
たまにリサーチ会社に勤めながら、「俺はリサーチには興味ないねん。関心があるのはその先やねん」という方がいらっしゃいますが、この方はリサーチをどう捉えているのだろうか?
もちろん、リサーチは手段であり、その先が大事なことは百も承知!
こういう方ほど、リサーチを「アンケート用紙を集めて、集計して、グラフ化する作業」と、狭~く捉えているように思えてなりません。
私は、リサーチ会社に勤めながらこういう発言をする人が正直大嫌いです。リサーチを極めてから言えよ、と。
(いつまでたっても極められない私の負け惜しみかもしれませんが…)
ちょっと前置きが長くなりましたが…
副題に「リサーチという機能はなくならない」と書きました。リサーチの本質を突き詰めれば、 「顧客理解」 というところに行き当たると思っています。定量データ/定性データ、行動に関する情報/意識に関する情報、形はどうあれ、それらはすべて
「顧客理解」 を目的とした営みだと思います。
ただし、マーケター/リサーチャーと、顧客とは別の人格です。これだけ価値観の多様化が進んだ現代では、どんなに優れたマーケター/リサーチャーであろうと、そうそう簡単に“顧客を理解する”ことなんてできません。
そこを、対象となる顧客に寄り添い、①顧客が頭の中にイメージしていることを共有し、背景も含めてコンテクストとして理解を試みる。そして、②自分とのズレを認識し、③再度顧客の思いを想像する、そんな難しい行為だと考えます。
これは、モノづくり、そしてコミュニケーションをデザインする際に、まずやらなければならない最も基幹となる部分ではないでしょうか。リサーチがその役目を担う限りは、世の中にリサーチというものは存在し続けると思われます。
一方、現在リサーチ業界には多種多様な企業が存在します。
例えば、大手企業を中心に…
  • パネルデータの提供
  • 視聴率データの提供
  • WEBアンケートシステムの提供
などを行っているリサーチ会社があります。これらは、クライアントである企業様が自社で個別にシステムを構築するには余りにもコストがかかります。どこかがまとめて行う方が断然効率的ですよね。
こういうケースでは、システムor情報を提供しているリサーチ会社は存在価値が薄れることはないでしょう。(企業間競争での個別企業の生き残りは別にして)
では、これら装置を持たないリサーチ会社はどうか。
上記のような「システム(機能)」、そこから得られる「情報」をお客さま自身が使いこなされたとすれば、「その他のリサーチ会社」は、何の価値をご提供すればよいのか?
  • 効率的な集計、グラフ作りの工程管理? 
  • 効率的な実査管理?
  • 対象者リクルート?
  • 専門会社ならではの仮説構築?
  • 新しい調査手法、分析手法のご提案?
  • ストラテジック・プランニング?
  • はたまた、また別の価値?
お客さまはいったいどんな価値を求められているのだろう?
明確な解を持ち合せていなければ、「その他のリサーチ会社」の存在価値は著しく低下してしまいます。
どのポジションで成長を目指すのか、真剣に考えないといけない時代だなぁ、とつくづく感じます。
(【第2回】 課題認識 自社も含めた“守旧派”のリサーチ会社が、お客さまに提供すべき価値とは!? 
につづく)
(立田)

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