先日、大規模な定性調査を担当させて頂く機会があり、勿論リサーチ結果をここでお話しさせて頂くことは守秘義務上できないのですが、過去に社内である文献についてみんなでまとめた結果に類似している点があり、リサーチの経験からその理論の正当性を肌で感じることができました。
アルジュン・チョードリー著の「感情マーケティング」
この文献をまとめることになった経緯としては、
市場のコモディティ化とともに、経験価値創造やブランド構築が企業にとっての重要課題となっている。ところが、経験価値やブランドを追い求める消費者の理解において鍵となる感情問題は、これまでマーケティングにおいてほとんど論じられていなかった。研究の題材とした「感情マーケティング」は、消費者による製品選択や広告メッセージについての処理などにおける感情的動機と理性的動機を記述したものである。
さらに、これらの動機的要因がブランド・ロイヤルティ、市場シェア、高価格マージンなどのマーケティング成果に与える影響を示している。
この文献から得られた知見を要約すると、
様々なマーケティング活動において、「感情(ポジティブな感情)」を高めること=情緒的価値を高めることで、商品に対する「知覚リスク」が軽減したり、コミットメントが高まる。
結果、「プレミアム価格」、高価格でも支払いたいというブランド成果を得ることができる。
マーケティング戦略を策定する際に、「情緒的価値」を高める戦術がインプリケーションされておく必要がある。
以下が、本文で書かれてあった「ブランドの態度形成過程をモデル化(図示)」した内容です。
私が担当させて頂いた調査においても、同様の示唆が得られており、普段の生活を振り返ってみても、、、
例えば、私は「ファション」に関してはとても疎く、夏は涼しく、冬は暖かい、ビジネス上では奇をてらわないといった最低限の基準(機能性)を満たしさえすれば、どんな服でもよいのです。
例えば、私は「ファション」に関してはとても疎く、夏は涼しく、冬は暖かい、ビジネス上では奇をてらわないといった最低限の基準(機能性)を満たしさえすれば、どんな服でもよいのです。
なので、ファッション(私にとっては単なる衣服)にはお金をかけません。
一方、過去にもこのブログで触れている「通信端末(ケータイ・スマートフォン)」にはお金に糸目をつけません。なぜなら通信端末は、私に日々、様々な情報を昼夜を問わず提供してくれ、疎遠になりかけていた旧友との繋がりの場を提供してくれ、スケジュールの管理までしてくれる。まさに、私にとっては「ドラえもん」に近い存在なのです。ここで得られる価値は情緒に溢れています。
人によっては「服」を「ファッション(自分をよりよく魅せてくれるモノ)」、一方で「通信機器」を「高機能な糸電話(単なる道具)」と、私とは真逆に捉えている方も多く存在しています。
これは、各個人にとって機能的な満足が得られるのか、それとも情緒的な満足が得られたるのかによって、その商品やサービスの見方、扱いそのものが変わってしまうという例です。
商品やサービスを提供する企業の視点では「機能的価値」を高めるコミュニケーションよりは「情緒的価値」が得られるようなコミュニケーションを実施していく必要があるということになります。
だって、同じ商品やサービスでも選択されることが多くなったり、プレミアムな価格でも受け入れられるということに繋がるのだから。
ここから更に思ったことは、これは有形の商品やサービスに限られたことではなくて、「ヒト」そのものにも言えることではないかということです。
「仕事が早い」「正確だ」といった評価を得られることは非常に重要なことだと思うが、「任せて安心」「とにかく頼れる」といった情緒的な側面での評価を得られる人になりたいと思う今日この頃。
だって、この情緒的な側面での評価を得られることで「指名がかかり」「高く買って貰える」のだから(笑)。
(浜本)