大阪のマーケティングリサーチの専門機関、市場調査社のスタッフブログです。
日常生活でスタッフが感じたことや、弊社のサービスの紹介をしていきます。
先日、伊丹市立美術館で開催されていた「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密展」を見に行きました。
ご存知の方も多いかと思いますが、エドワード・ゴーリーとは、アメリカの絵本作家です。その特徴は「陰鬱でモノクロな線描表現」「不条理で不気味な世界」で、ストーリーも凹むものが大半。「絵本と言いながら、子供には絶対見せてはいけない類の絵本」とも言われています。
私自身はその独特の世界観が好きで、有名どころを何冊か持っていますが、やはり、何となく変な倫理観が働いたのか、息子の絵本読み聞かせ時にはついぞ登場することはありませんでした。
館内で改めて原画などを見るにつれ、完成形に至るまでの妄執的ともいえる描き込み量の多さに圧倒されたのですが、さらに興味深かったのが、奇妙なキャラクターや不気味なストーリーテリングの発想法について問われた際の、ゴーリーの答えでした。
館内に置かれていた資料を立ち読みしての記憶なので、表現は若干違っているかもしれませんが、
“形は不完全であっても、とにかく手を動かして描いていくことで、天啓が下りてくるのを待つ”
“自分は温厚で心優しい人物であるから尚のこと、世の中の不公平や矛盾、残酷な事象を強調したくなる”
的な言葉が印象的でした。
これを見て思い出したのがロアルド・ダールの言葉です。
「チョコレート工場の秘密」「南からきた男」などの作品で有名な彼もまた、キャラクター造形や着想の妙で多くのファンを持つ作家です。
彼もまた小説のアイデア発想について問われた際に、似たような言葉を残しています。
“素晴らしいインスピレーションは、しばしば子供時代の様々な経験から降ってくる”
“魔法はそれを信じる人にしか見えない。…(だから魔法を信じて)書き続けることが重要”
商品・サービスのコモディティ化が問題となって久しく、「イノベーションの必要性」「アイデア発想の重要性」は、現代のマーケティングに携わる人であれば言わずもがな、でありましょう。そしてまた明快な解決法がなく頭を痛めている問題でもあります。現在、様々なシーンで取り入れられている「デザイン思考」による問題解決のフローもまた、その流れから出てきた思考術です。
デザイン思考の基本フローは
「共感→問題定義→創造→プロトタイプ→テストの反復」(by d.school)
ですが、各ステップでの“心構え”“作法”が、実はゴーリーやダールが言っていることと同じなのだということがよく分かります。
普通に考えれば、小説家・絵本作家はストーリーはもちろん、キャラクターや人物設定でその世界を「見える化」させる作業が必要不可欠であり、そこに長けた彼らの創作術こそ、まさにデザイン思考のセオリーに則ったものなのでしょう。
アイデアを発想するツールはそれこそ古典的なモノから、現役のクリエイター諸氏が開発したモノまで有象無象ですが、ツールはあくまでもツール。
がないと、素晴らしいアイデアに繋がるインスピレーションは得られないのだ、ということなのでしょう。
ここ何か月かの間に読んだ本の中で、印象に残った言葉を最後に。
「インスピレーションには偶然の要素が含まれるが、その偶然は心構えのある人にしか訪れない」(by ルイ パスツール)
(山本)
弊社内を見渡すと、2月は定性調査の嵐でした。デプスインタビュー約80人、GI 8グループ、ホームビジット2案件。忙しかったですが、楽しい日々を過ごさせていただきました!
そんな中、最近弊社にて増加傾向にある一つの流れをご紹介させていただければと思います。
□おうち訪問遠足(ホームビジットをより気軽にご提供)
最近、調査業界でも話題になっているデザイン・シンキング。顧客に着目し(人間中心デザイン)、ニーズの本質(インサイト)をつかむことから発想のヒントを得て、アイデアをたくさん出して、プロトタイプを作って、短期間で検証を繰り返す、という手法です。
顧客に寄り添う手法の一つとして、ホームビジットがあります。生活空間に入り込んで、生活文脈から丸ごと理解して、インサイトにたどり着こうというもの。会場でのインタビューを超える情報量が手に入ります。
とはいえ、自宅訪問というだけで、“大変そう!忙しくてそこまで手が回らない!”とお感じのクライアントの皆様も多いでしょう。
これをお手軽に、気軽にご提供しているのが、「おうち訪問遠足」です。クライアントの皆様と弊社スタッフがご一緒にターゲットの自宅を訪問。その帰りにカラオケボックスや居酒屋などでデブリーフィング、参加者全員の「気付き」を出し尽くします。頭の中で熟成させ、数日後にワークショップで、「インサイト」を発見。
既に複数社のお客様にご利用いただいています。
※詳しくは下記弊社HPをご参照ください。
https://mri-idea.co.jp/research5
□インサイト
上記に「ワークショップで、『インサイト』を発見」と書きましたが、正解のない世界でもあり、これがまた大変。
そもそも「インサイト」の定義って何なんでしょう?
世の中には色々な定義があると思います。「生活者インサイトとは、人の行動や態度の奥底にある、時には本人も意識していないホンネ」とか、「消費者インサイトとは、消費者の行動原理や、行動の背景にある意識構造を見通した結果得られる、購買行動の核心やツボのこと」とか言われていますね。
でも、「インサイトの発見」って結構大変!そう感じるのは以下の二つの理由からです。
①そもそも他人の心理、価値観を理解することが難しい
他人の心なんて早々簡単に分からない。その要因の一つには、自分の人生経験で得た価値観や思考の「枠組み」しか持っていないから、どうしてもそれに当てはめようとしてしまう、当てはまらない場合は考えるのを放棄してしまう、という特性があるからではないかと思います。
だとすると、他者の「インサイト」を語るには、まずは「自分との対話」が必要というところに行きつくのです。
自分の中にある「枠組み、概念」と向き合い、その「枠組み、概念」を解き放して、自分とは違う他者を受け入れて「共感」できるか、にかかっているのではないか、と思うわけです。
②「インサイト」は一つではなく、その中でビジネスに寄与するインサイトを言い当てるのが難しい
「革新的な解決策は、人間行動の中に潜む最良の『インサイト』からうまれる」と言われます。でも、「インサイト」は一人一つとは限らず、深さのレイヤーも色々。そのうち、商品・サービス開発に役立つインサイトはどれか?
ここの精度を高めるためには、クライアントの皆様のビジネス環境(PEST、3C)を深く理解しておく必要があると思います。
「インサイト」って奥深いですね。これからも追究し続けていきます!
(立田)
スタッフ