大阪のマーケティングリサーチの専門機関、市場調査社のスタッフブログです。
日常生活でスタッフが感じたことや、弊社のサービスの紹介をしていきます。
ここ数年、弊社でもネット広告やSNS広告をテーマにした調査のご依頼が増えています。
テレビ離れが言われるなかで、若年層に届きやすいネット広告は、多くの企業にとって欠かせないチャネルになっていると思います。
……と書いておきながら、正直に申し上げますと、私自身は消費者の立場としてネット広告やSNS広告をほとんど信用していません。
仕事で消費者行動を調べている人間がこれを言うのもどうかと思いますが、相当懐疑的な部類だと思います。
ただ、だからといってネット広告を否定する気はまったくありません。むしろ最近は、「広告を信用していない人にも、ネット広告はちゃんと効いている」と考えるようになりました。今回は、その理由を自分自身の行動を振り返りながら書いてみます。
私は人並みにネットやSNSを日常的に利用しています。でも、広告はほとんど見ていません。
正確に言うと、視界には入っているのですが、「あ、広告だ」と認識した瞬間に読み飛ばしています。
理由は単純で、タイトルと中身が違うもの、誤クリックを誘いそうな配置のもの、やたらと不安を煽るもの、実際のサービスと明らかに乖離しているもの。そういう広告に何度も出会ってきたからです。
副業、情報商材、美容・脱毛、マンガあたりのジャンルは、正直もうお腹いっぱいです。
もちろん、真面目な企業の良い広告もたくさんあります。ただ、出稿のハードルが低い分、いろいろな事業者が参入でき、良質な広告とそうでない広告が同じタイムラインに並んで流れてきます。これも事実だと思います。
もうひとつ、信用しづらい理由があります。広告主の実態が見えにくいことです。
テレビCMは出稿にそれなりの費用がかかるので、どうしても一定規模以上の企業が中心になります。「CMを出しているから安心」とまでは考えていませんが、少なくとも誰が言っているのかは分かりやすいです。
一方で、ネット広告は、企業名が出ていても本当にその会社なのか判断がつかないことがあります。有名企業を装った詐欺広告も珍しくありません。
金融系、銀行や証券、資産運用、保険といったサービスの広告は、私はまずリンクを踏みません。
いったん検索して、公式サイトから入り直します。
つまり「自分で検索したものしか信じない」という行動をとっているわけです。
同じような方は、けっこういらっしゃるのではないでしょうか。
ここまで読むと「この人にネット広告は無力だな」と思われそうですが、実はそうでもありません。
先日、革鞄を探していたときのことですが、SNSに偶然、革鞄を紹介する投稿が流れてきました。
内容は商品の宣伝ではなく、有名ブランドの革製品を分解して、職人の目線で作りや品質を見ていく動画の紹介でした。
これが目に留まりました。
「ブランド品の中身はどうなっているんだろう」「職人はどこを見て良し悪しを判断するんだろう」
という好奇心からです。
結局、私は自分で調べて動画を見に行き、そこから紹介されていた職人さんのメーカーを知り、最終的にはECサイトまで訪問していました。
広告を信用していないのに、検索するという行動を取りました。
この行動を振り返ってみて、ひとつ腑に落ちたことがあります。
私はこれまで、ネット広告の役割を「商品理解を深めること」や「購買意欲を高めること」だと考えていました。
しかし、ネット広告は情報量も接触時間も限られており、それだけで十分な理解や強い購買意向を形成するのは難しいのかもしれません。
実際、今回私が行動を取ったきっかけも、商品の魅力を深く理解したからでも、強く欲しくなったからでもありません。単に、「そんな商品があるのか」と認知して興味を持ったことにあります。
興味を持つと、人は、情報検索(商品理解)といった行動に移ります。
ネット広告の価値はまさにそこにあるように感じます。
広告は信頼を獲得する場ではなく、まず存在を知ってもらい、「少し調べてみよう」と思わせる場であり、そして信頼の獲得や購買意欲の向上は、検索の先で得た情報によって形成されます。
インターネット時代の広告は、その最初のきっかけをつくる役割を担っているのだと考えています。
そう考えると、出稿する側が陥りやすい誤解も見えてきます。ネット広告の中で商品の良さを説明し切ろうとしてしまうことです。
広告に懐疑的な人は、説明が始まった瞬間に身構えます。
頭の中で「売り込みだな」「企業側の都合だな」「説明が長くて読むのが面倒だな」というスイッチが入るからです。
逆に、意外な事実や問題提起、発見、驚きには目が留まりやすいです。人は、知っていることと知らないことの間にギャップを感じると、その差を埋めたくなるからだと思っています。
SNSで成果を出している企業を見ていると、答えを全部は説明していないものが多いように感じています。必要なのは長い商品説明ではなく、「なんで?」「それ本当?」といった検索したくなる余白を残すことなのだと思います。
広告に懐疑的な人へ情報を届けたいなら、ネットの中で説得しようとしないことが大切だと考えています。
ネット・SNS広告の役割は、気づきを与えて興味を持たせるところまで。
その後は、検索から公式サイトへ、比較・検討を経て問い合わせや購入へ、という流れをあらかじめ設計しておきます。
広告で分からせるのではなく、「自分で調べてみよう」と思わせます。そして調べた先に、きちんとした情報を置いておきます。そこまで設計できていれば、私のように広告を信じていない人間にも、ネット・SNS広告は十分に届くのだと思います。
ネット広告・SNS広告の調査においても、「どの広告が好かれたか」だけでなく、そのあとに何を調べ、何を見て決めたのか、まで含めて重視したいと考えています。
届かせたい相手が広告を読み飛ばす人ほど、その後ろの導線が効いてくるように思います。
大西
スタッフ