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大阪のマーケティングリサーチの専門機関、市場調査社のスタッフブログです。
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本屋の将来はどうなる?(山本)2012年10月29日 月曜日

■電子ブックの本格流通が始まる?

先日、アマゾンが電子ブックKindleストアの日本でのサービス開始ならびにブックリーダー端末の日本発売を発表しました。これまでも大手書店や印刷会社主導の電子ブックストアはありましたが、「世界最大の書籍流通であるアマゾン」ということでまさに「真打登場」といった様相です。どんな書籍がラインナップしているのかちょっと確認するつもりが、端末の魅力的な価格設定とも相成り、ついついリーダー端末の購入ボタンをポチっと・・・・年末からは電子ブックデビューとなりそうです。

 

本屋は衰退の一方なのか?

アマゾンが最大の書籍流通となったころから、既存のリアル店舗とネット流通との関係は「ショールーミング」と称されるようです。店舗では実際の商品の見た目や内容を確認したうえで、購入自体はポイントが付いて価格も安いネットで購入する、つまりリアル店舗はネット通販の「ショールーム」と化している、ということです。さらに商品そのものまでものがデジタル化される書籍に至っては、近い将来はリアル店舗そのものが必要なくなるのでは?という声も決して絵空事ではないと思われます。本屋の利点って何なの?存在価値は?というのを、本屋好きのユーザー視点で考えました。

 

■本屋は知の集合体である(しかも好奇心の刺激はタダ)

これ昨日仕事帰りに寄った本屋で購入した書籍です。

立ち寄った目的は「最新のNumber、買うの忘れてたなぁ、買いに行こ」という軽い感じでした。ところが実際に本屋を出た時にはNumber含め6点を買っていました。ジャンルもサブカル、小説、ビジネス指南、マンガ、ノンフィクションルポと、最新刊から1年前の発行のものまで、見事にバラバラ。

 

これこそが本屋の最大の良さだと思います。当たり前ですが本屋にはジャンル別に様々なコーナーがあります。文芸、社会・経済、経営・ビジネスから、理工・法律などの専門性の高いものまで。古今東西の知識・知恵・思想・経験が、下世話なものから高尚なものまで、手を伸ばせば届くところに集まっており、実物を見て好奇心が刺激されればすぐに新たなジャンルに足を踏み入ることができる。

 

この刺激はネットの世界ではなかなか実現できません。よくあるネットのリコメンド機能はあくまでも購買履歴や索引履歴をもとにしたものなので、例えば今回の私のように、Number→いがらしみきおのマンガ→吉田豪のインタビュー集→新進気鋭作家のミステリー、といった連鎖が一度には起こりえないでしょう。知的好奇心の刺激から新たな世界を(店内をたった10数分ぶらつくことで)覗くことができるのが、リアル書店の最大のメリットだと思います。

 

「好奇心が刺激されたらその場で買わずに、帰ってからネット購入すればいいじゃないか」と思うかもしれません。でも人間、ふっとした機会に芽生えた新たな好奇心がそんなに継続することはありません。うちに帰って改めてネットで購入しようとまで思えるものは、たぶん潜在的に興味があったものなんだと思います。それまで全く興味のなかったジャンルや人物のふと気になったタイトルや装幀に惹かれて、新しい世界に足を踏み入ることができるのは、やはり本屋でしか体験できないことだと思うのです。

 

■日本人の読書総量低下の方が大問題

総務省の家計調査の最新データによると、1世帯あたりの書籍・雑誌等の購入額は1万3千円/年、だそうです。月間ではなく年間です。ひと月に1000円強しか本にお金を使っていないということになります。個人的にはこの数字に驚愕の思いです。ネット及び携帯に費やす時間・コストがそのまま反映されているのでしょうか。

 

確かに専門的な知識も含めてあらゆる情報は、今やネットでググれば簡単に手に入れることができます。でもやはりネットの情報だけでは手に入れられない、身体に染み込まない「知の連鎖」はあるはずだと思います。

 

そんな中、「クラウドで本棚いらず」だとか、「雑誌の自動配信がユーザーを拡大する」といった戦術・方法論は些末なことに感じます。確実に失われつつある読書習慣(あるいは文化といってもいいかもしれません)を取り戻すための抜本的な戦略に、出版社、流通(もちろん書き手も)が一体となって取り組まないと日本の社会自体が恐ろしく知的貧困化するのでは、と子どものころから活字中毒だった私は危惧しております。

 

(山本)

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